春に咲く柚
なのにそんな下らないことを、あろうことか綺咲の目の前で吐くなんてっ!


私は怒りの余り怒鳴ろうと口を開いた。


……けどそれは、とある一言によって掻き消された。


綺咲の発した一言に。


いつもは優しい綺咲の声音。


けれど今回は、酷く、冷たいものだった。


「だから?」


たった、その一言。
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