春に咲く柚
と答えた。


流石の私でも、もう三十分近く一緒に居る相手に挙動不審になったり、緊張したりはしない。


「ああ、俺も同じ方向。二つ先まで行くけどね」


そしてそのまま共通のホームへと向かい、電車に乗り込む。


学生の下校時刻はとっくに過ぎていて、また、会社員の帰宅時間にはまだ早いせいか、ホームにも電車内にも、人は殆ど居なかった。


何となく気まずい中電車は走り続け、たった数分で三つ目の駅に到着した。
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