春に咲く柚
「お疲れのようだね、柚。またフッたのかい?」


どことなく胡散臭い口調のそいつは俺の数少ない友人ーー鈴村尚人(すずむらなおと)。


数少ない友人、とは言ったものの、別に友人が居ない訳ではなく、気兼ねなく話せる友人ということだ。


尚人の声掛けに肩を竦めて応じると、言う。


「ああ。今日は男子だ。未練がましくてね」


と、溜め息混じりに冗談めかして言うと、尚人が訊いてくる。
< 41 / 213 >

この作品をシェア

pagetop