春に咲く柚
「……そこの彼?」


その問いに再び肩を竦め、鞄を手にして扉に向かう。


「帰るのかい?」


尚人の呼び掛けに半身だけ振り返り、


「”用事”」


苦笑混じりにそう言って、再び歩き出した。


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