春に咲く柚
『用事』


と、確かに俺は言った。


けれどそれは誘いを断る為の口実でしかなくて、断った相手が見ていたから言っただけのこと。


もしもあの場にそいつが居なかったら、俺は何も気にせず、いつも通り駅へと向かっただろう。


だからこそ、困っている。


「何して暇潰そうかなぁ……」


何て、人気のない廊下を歩きながら、一人小声で呟いてみた。
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