春に咲く柚
来客にも気付いていない女子生徒の前を無言で通り過ぎ、俺は真っ直ぐに館内の奥へと進んでいく。


以前図書館内での自習の際に見付けた、奥深い位置にある窓。


背の低い本棚に腰を下ろすと、柔らかく射す西日が心地よい眠気を誘う。


そしてそのまま、俺は意識を手放した。



 ✳ ✳ ✳



次に目を開いた時、日は大分沈んでいて、少しずつ辺りは暗くなっている頃だった。
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