春に咲く柚
丸く、大きな黒い瞳。
夕日の光を弾く、長い睫毛。
ほんのり赤みを帯びた唇。
白い肌。


俺は一瞬目を丸くしたが、すぐに微笑んで、言う。


「これ?」


俺の言葉に、固まりながらも小さく頷く少女。


少女に本を手渡し、それでも硬直したままの彼女に目線を合わせて、尋ねる。


「大丈夫? 気分でも悪い?」
< 47 / 213 >

この作品をシェア

pagetop