春に咲く柚
別に本気で体調不良を考えた訳ではない。


ただ彼女の硬直を解こうとしての問いだ。


「あっ、いえっ、大丈夫ですっ!!」


慌ててそう答える彼女に少し目を見開き、けれど可笑しさの方が勝って、俺は思わず笑った。


名前を名乗り、名前を訊くと、彼女は耳まで真っ赤に染めながら、


「えっと、ハルミヤキサキといいますっ」


と言った。
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