春に咲く柚
キサキの慌てた口調は、今だ緊張しているせいだろう。


「キサキ? 珍しい名前だね。どういう字?」


俺の問い掛けに、キサキはやはり俯きながら答える。


「”綺”麗に”咲”くと書きます」


”綺咲”


その漢字を聞いて、何故か俺は納得した。


綺咲は恥ずかしそうに、先程までよりも一層赤くなっていたが、俺は一人頷いていた。
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