春に咲く柚
「案外近くに居たみたい。これでしょ?」


そう言って見せられたのは、確かに俺が言った通り、薄い藤色と白のストライプ。


「伊月恋(いつきれん)いいます。よろしゅうな」


京都弁の、男。


身長は俺と同じくらいの、女子には人気のありそうな容姿。


目は細く、見えているのかどうかもよく分からない。


「……音羽柚季です……。よろしく……」
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