春に咲く柚
そこまで答えると、途端に先輩は拗ねたように唇を尖らせて、


「……俺だけ『先輩』なんだ?」


と、不満げに言った。


その様子に私は再び赤面し、オロオロと視線を宙にさ迷わせた。


一通り動揺し切った後、おずおずと口を開く。


「えと……。柚、先輩……?」


そう呼び方を改めると、柚先輩はパッ、と表情を明るくした。
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