夢を忘れた眠り姫
でも、彼が矢面に立ってくれていて、私はその経過を報告してもらうだけだし。

自分で動かなくちゃいけない事に比べたら、精神的にも物理的にも断然楽させてもらってるんだもんね。

だから面談くらいは快く応じておかないと、彼に申し訳ない。

そんな風に脳内で目まぐるしく考えを巡らせながら歩を進めていた私は突然、ふと、強烈な違和感を覚え、ピタリと足を止めた。

いや。
正確には、それ以前からすでに抱いていたその感情を、改めてしっかりはっきり認識した、といった方が正しい。

同時に、何ともいえない胸騒ぎが湧き起こる。

思わずパッと振り返り、周囲をキョロキョロと見渡した。

しかし、何が私をそんな気分にさせているのかは、皆目見当がつかず。

OLさん、サラリーマンと思われる男性などが、歩道の真ん中で立ち止まって不審な動きをしている私を訝しそうに、だけど視線はかち合わないようにチラッと盗み見しながら足早に通りすぎて行くだけ。

その点以外はいつもの見慣れた朝の通勤風景だ。

一体何なのだろう。
この、ザワザワとしたとても嫌な気持ちは……。

尋常ではない不安を抱えながらも、とにかく目当ての電車に乗り遅れないようにしなければと、私は再び駅に向かって歩き出した。
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