夢を忘れた眠り姫
強引で取ってつけたようなストーリー展開は読者の皆様に真っ先に突っ込まれるっつーのにまったく。


「庶務課ってホント細々としたこと頼まれるもんね。中には『いやいや、それくらい自分でやれよ』ってことも」


私が心の中でダメ出ししている間に話は進んで行く。


「でも、君は嫌な顔ひとつせず、むしろほんわかとした笑顔で日々せっせと業務をこなしているから、いつも感心して見ていたんだ」

「いえ…それはだって、仕事ですから」


彼は私を持ち上げるべくそのエピソードを語っているんだろうけど、イマイチ心に響いて来なかった。

そんな当たり前の事を大袈裟に誉められてもねぇ、と。

よく、ドラマや漫画や小説なんかでコピーや来客へのお茶出し、書類整理を任されたOLが「こんなことをするために会社に入ったんじゃないわ!」とか憤慨している場面が出て来るけど、『いやいや、何を言ってるんだい?』といつも思う。

それらの業務もバリバリ立派な仕事の一つじゃないかと。

むしろ、それを省いてしまったら、あなたが所属する部署の、やり遂げるべきミッションは成立しなくなってしまうのではないのかい?と。

「こんな仕事」って、だったら何があなたにとって納得できる仕事なのですか?と。

皆の注目を浴びて華やかで、これでもかとばかりにスキルの高さをアピールできるような仕事しかやりたくないというのだったら勘違いも甚だしい。
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