夢を忘れた眠り姫
地味で目立たない、だけど重要なプロセスの一つであるそれらの処理を完璧にこなしてこそ無事にゴールにたどり着けるのだし、周りからの評価に繋がるのだから。

それを分かっていない人が仕事で大成できる訳がない。

仕事を選り好みし、仕事を甘く考えている者はいつか仕事に泣かされる。


「俺ってシャイだから。むしろ本命にはガンガンと行けないんだよね」


なんて、またもや私が自分の世界に入っている間に落合さんが超至近距離まで接近していた。


「はっきりいって油断していたというのもある。永井さんて奥手そうだから、そんな簡単には誰かと付き合ったりしないんじゃないのかなって」

「え、えっと……」

「それなのにすでに貴志君とできてたなんて。まったく、彼って見かけによらず手が早いんだな」


そ、そんな事より、ちょいと近すぎやしませんか?

しかもいつの間にやら踊り場の隅っこにまで追い詰められてしまっているのだが……。


「もう、俺の入り込む余地はないのかな…」


ますます私に顔を近付けながら、落合さんは切なそうな表情、声音で囁きかけて来た。

そこで私は『あ、これはあれか』と唐突にピコーンと閃く。

それまでは大して興味のなかった相手でも、誰かとくっついた途端に光輝いて見えてしまうというあのやっかいな法則。

結婚してから「最大のモテ期が到来した」なんて人もいるくらいだもんね。
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