夢を忘れた眠り姫
「はい。『周りから浮かない程度にお洒落をして、今時の流行りを取り入れるミーハーさがありつつも、人より一歩引いていて大人しく、いつもニコニコしている』キャラクターが、何だかんだで一番無害に思われて敵を作らないから」


地味過ぎても派手過ぎても悪目立ちして攻撃の対象になるもんね。

だからその事実に気付いた時からそういうキャラを押し通す事に決めた。

だって私にはもう、無条件に私に愛を注いでくれる両親はいないのだから。

頼れるような親戚もいない。


……自分の気まぐれでちょっかいを出して来て、ただただ私を振り回して惑わせてくれる人ならいるけども。

だからせめて周囲の人間とは良好な関係でいなければ。

うかつに敵を作ってしまったら面倒くさいことこの上ない。


「まぁ、君の好きなようにすれば良いんじゃないのか?」


私が新たに決意表明をしている間に貴志さんは話のまとめに入った。


「そして俺も好きなようにさせてもらう。事前に話し合っていた通り、お互いの私生活には干渉しないって事だ」


そこで再び流し目チックに睨まれた。


「だから俺の事は放っておいてくれ」

「…分かりました」


その何とも色っぽい仕草にまたもやノックアウトされそうになっている事は悟られないよう、表情を引き締めて頷いた。

…でも、いくらなんでも、もうちょっと今時の若者風味にしても良いのにねぇ…。
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