吸血鬼
棺から出てきたのは、古風なマントと礼服と更に、タクシーの運転手が着ける白い手袋を嵌めた七十代ぐらいの老人が出てきました。
田中君は、目の前で起こっている事が小説の様な光景で、また、至極奇怪千万でびっくり仰天していると、出てきた老人は、
「田中君。そんなにびっくり仰天する事はない。さあ、一緒に座わらないか。」
と、老人はベンチに何事も無かったかの様に腰を下ろしました。
田中君は、しばらく考えた末、結局老人の誘いに従う事にしました。
「どうだね。田中君、学校の方は。」
「すいません。お爺さん、何で僕の名前知ってるんですか?」
「ハハハ。そりゃ知っておるとも、わしは何百年も生きておるのじゃからな。」
「何百年もですか?」
「ああ。そうじゃ。」
「お爺さん。あなたは何者なんですか。」
沈着冷静な田中君は、こう老人に質問しました。
「ハハハ。随分と、単刀直入な質問じゃな。わしはな、…………吸血鬼なのじゃ。」
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