吸血鬼
「吸血鬼って……、ドラキュラ?」
「ああ、左様。わしは、君の言うとおりドラキュラじゃ。」
「でも、ドラキュラって……、もっと若々しいイメージがあるような……。」
「ハハハ。それは、小説や映画の影響じゃな。そんな事はない。ドラキュラだって棺で長い年月寝ていたら老化ぐらいする。別にそこは、人間と何ら変わりはしない。ただ、違うのはドラキュラは、不老不死なのじゃ。どれ、わしがドラキュラだという証拠を見せてあげよう。」
と言って、老人は「にー」と発音する様なロを作って、田中君の方に自分の体を向けました。
ああ、これが人間の歯なのでしょうか。老人の犬歯は、ライオンの牙の如く鋭いもので、それ以外の門歯だとか臼歯は、いたって普通なのですが、その異様な犬歯が、田中君の目に、あまりにも鮮烈に焼き付いてしまって、もう老人の言う事を信じる他ありませんでした。
「どうだね。信じてくれたかな。」
「はい……。一応...…。」
「うむ。よろしい。それじゃわしは、ここで失礼するとしよう。ああ、そうだ。田中君の御両親にこれを渡しておいてくれないか。」
と、老人がそう言って差し出したのは、一個の封筒でした。封筒には、「田中嘉樹君の御両親へ 必親展」と、墨で書かれていました。
「これを、家に帰ったら御両親に見せるように、必ずじゃよ。必ず……。」
と、老人は言ってどこかに消え失せてしまいました。そして、不思議な事に、足音もしなかったのです…………。
「ああ、左様。わしは、君の言うとおりドラキュラじゃ。」
「でも、ドラキュラって……、もっと若々しいイメージがあるような……。」
「ハハハ。それは、小説や映画の影響じゃな。そんな事はない。ドラキュラだって棺で長い年月寝ていたら老化ぐらいする。別にそこは、人間と何ら変わりはしない。ただ、違うのはドラキュラは、不老不死なのじゃ。どれ、わしがドラキュラだという証拠を見せてあげよう。」
と言って、老人は「にー」と発音する様なロを作って、田中君の方に自分の体を向けました。
ああ、これが人間の歯なのでしょうか。老人の犬歯は、ライオンの牙の如く鋭いもので、それ以外の門歯だとか臼歯は、いたって普通なのですが、その異様な犬歯が、田中君の目に、あまりにも鮮烈に焼き付いてしまって、もう老人の言う事を信じる他ありませんでした。
「どうだね。信じてくれたかな。」
「はい……。一応...…。」
「うむ。よろしい。それじゃわしは、ここで失礼するとしよう。ああ、そうだ。田中君の御両親にこれを渡しておいてくれないか。」
と、老人がそう言って差し出したのは、一個の封筒でした。封筒には、「田中嘉樹君の御両親へ 必親展」と、墨で書かれていました。
「これを、家に帰ったら御両親に見せるように、必ずじゃよ。必ず……。」
と、老人は言ってどこかに消え失せてしまいました。そして、不思議な事に、足音もしなかったのです…………。