吸血鬼
田中君は、今まで起きた幻灯の様な光景に、しばらく、唖然としていましたが、ふと、幻灯の中の老人を思い出し、棺を探して見ましたが、もうすでに、公園には、棺はなくなっていたのでした。
ですが、田中君の手中には、あの封筒がありました。
田中君は、何か取り憑かれたかの様に、全力疾走して、帰ってきました。
玄関の鍵を開けると、田中君のお母さんが、田中君の帰りを待っていました。
「どうしたの嘉樹。そんなに急いで帰ってきて。」
「あの、お母さん。これ、公園でお爺さんに渡されて……。」
田中君は、例の封筒をお母さんに渡して、公園で起こった出来事の一部始終を話しました。
「それ、どう考えても不審者よ。何で、すぐに逃げなかったの。」
「ごめんなさい。でも、そのお爺さん、不審者には見えなかったし……。」
「そういう人が不審者なのよ。全く、もう……。まあ、無事で良かったわ。とりあえず、家に入っちゃいなさい。」
「はーい。」
田中君は、とっとと、二階にある自分の部屋へ上がるのを、お母さんは確認すると、
「一体、何なのかしら?」
封筒の封を解き、中に入っていた便箋を取り出すと、「あっ……。」と思わず、お母さんは驚嘆の声を上げました。それは、次のような奇妙な文面が書かれていたからでした。
「田中 嘉樹君の御両親へ
わしは、この度、田中君を我が一族にひきいれようと思う。
わしは、吸血鬼じゃから人間を超越した力を持っておる。じゃから、警察に訴えようが無駄じゃ。近々、詳しい事を記した紙を、ご自宅までお届けするので心して待っておるが良かろう。田中君の御両親には、申し訳ないが我が一族の繁栄の為に、田中嘉樹君は吸血鬼となるのじゃ。
吸血鬼 Blood sucker」
< 5 / 7 >

この作品をシェア

pagetop