魅ノ狂夢ー侵食ー
俺の夢の中のパンドラとの出会いは、頭だけの人形
それに、ひたすら言葉を教えていた…
ーーーーー雅仁は、優しかったーーーー
笑顔…ぎこちない人の表情だ。
ーーーーー雅仁が、ぼくのことを拾ったーーーー
拾った?
「俺の記憶では、言葉を教えていただけだぞ。」
パンドラは、寂しそうな表情を作った。
そうして、俺の頭を撫ではじめ囁いた。
ーーーーーぼくは、誰にも雅仁を渡さないーーーー
気が遠退く、またなのか…茜
「茜…ごめん…」
気がつくと、雅仁の部屋の前で眠っていた。
「茜ちゃん、起こしちゃった?ごめんね…」
おばさんが、毛布を手にたっていた。
「いえ、大丈夫ですよ。」
おばさんが、暗い顔をしている。
そんな、おばさんに私は笑って見せた。
「もし良ければ、もうそろそろ、お話聞かせていただけませんか?」
そう、彼から一方的に別れを言われたのが突然で私は、未だに彼がこうなってしまった理由がわからないのだ。
「御茶でも、いかがかしら?そうね、ここでは、なんですから…」
おばさんは、毛布を畳んでリビングに案内してくださった。
おばさんは、毛布をソファーにかけ、お茶をいれてくださった。
カモミールの、香りに少しほっとした。
「美味しい、お茶…」
おばさんは、にっこり笑ってカップのお茶を見つめながら、話始めた。
「私も、実は気付いてあげられなかった…ううんわからないのよ…」
おばさんは、眉をひそめた。
「お父さんが亡くなって、雅仁は私のために、受験就職大変だったと思うの…」
「おばさんだって、ずっと看護婦で働いてらしたじゃないですか…」
「いいえ、雅仁が強くって頼っていたからなのよね…あのこの気持ちは、どうだったのかしら…」
おばさんは、辛そうに下を向く。
「製薬会社に務めて、雅仁は研究の日々…お父さんのことがあってずっと、一人でも多く薬で助けられるならっていつも、笑って頑張ってた。」
雅仁は、私にもそう言っていたっけ
「新薬のプロジェクトチームに、配属が決まって、雅仁がしばらく帰って来なかった…あの時止めておけばよかったのかしら…」
おばさんが、涙を溢した。
「新薬のプロジェクトの話は、私も聞きました…嬉しそうで、誰も止めることなんて出来ませんでしたよね。」
「でも…雅仁が帰って来たときには…私のことすら、拒絶したのよ。うつ病かしら…そう思ったけど、お医者様もお手上げで…そうね、3ヶ月経ったくらいに、佐竹さんって上司の方がお見舞いにいらして…」
佐竹?聞いたことのない人。
「その時、雅仁は自分から彼を部屋へ招き入れていたの…息子の部屋へ入って行く彼に、少し複雑な思いがあったけど…佐竹さんが帰られた2日後に、雅仁が部屋からでて、ごめんって言ったの。それ以来、調子が良ければ食事も会話もあったの…」
私が、雅仁から別れを告げられたのもその時期だ…
「プロジェクトの時、雅仁私との連絡とってなかったんです。私、忙しいと思って…なにも知らないまま、別れを告げられた。」
「…」
おばさんは、ハンカチで涙を拭いた。
そのあと、私の目を見つめて
「おかしいことがあるのよ。」
と、切り出した。
「えっ?何がです?」
おばさんは、立ち上がり書棚からファイルを持って来た。
雅仁名義の通帳と、給料明細だ。
「ずっと、お給料が入っているのよ…給料明細は、雅仁が戻って来たときから来てないのだけど…その件で、佐竹さんにお話したら、息子はうちの社員だからって…変よね?」
毎月、振り込まれていた。
「確かに…雅仁は仕事やめてないんですか?」
「わからないのよ…でも普通なら、辞めてるわよね…そうじゃなくても、雅仁が自分で…」
おかしい。
「調べてみます…」
私は、少し嫌な感じがした。
佐竹と言う男が、何かを握っていると思う。
「とりあえず、今日は寝ましょう。」
おばさんは、立ち上がり私を撫でた。
「あ…はっはい」
私は、その夜一睡もできなかった…雅仁が心配。