眠れない夜は君に逢いたい
はじまりとおわり
「秀ちゃん起きて」
毎日の日課。
秀一、こと秀ちゃんを起こすこと。
電話越しで。
秀ちゃんとは、付き合って長らくなる。
8年間。
そう、8年間になるのだ。
「…まぁこ、ありがとう、起きれた」
少しかすれた色っぽい声で秀ちゃんが
受話器越しに私の名前を呼ぶ。
真子、真実の子と書いて真子
私は古くさくて嫌いなんだけど
秀ちゃんのまぁこって言う名前は気に入っている。
「仕事、間に合いそう?ちゃんと寝た?」
思わず声が弾む。
「…う…ん、大丈夫、準備して行ってくるね」
「がんばってね!大好きだよ秀ちゃん」
「俺もまぁこ好きだよ、次の休みわかったら連絡するね」
うん、わかった。大好きだよ。と言ってスマホの終了ボタンを押す。
ケータイの点滅が消えてため息が漏れた。
恐らく、秀一は休みがわかっても連絡しないだろう。