眠れない夜は君に逢いたい




秀一からの連絡が休みとれたよと
ひさしぶりにきて
嬉しくて秀一の家に行くと
もう逢えないと真面目に言われた時も
私は聞こえないふりをした。



「忙しいもんね、仕方ないよ、秀ちゃん大好きだよ」

逢えない理由の続きは聞きたくなかった。



秀一は優しい。

大丈夫時代からかっこよくて優しいと有名だった。


優しいというか、きっぱりと断ることができない。困ってる人や泣いてる人をほっとけない。女の子には特に傷つけるような事は一切言わない。




自分が悪者になりたくないのだ。









私が強く言わない限りは
秀一は私とは別れられない。


私はそれを知っている。

私が強く泣き叫んだり、明里のように問い詰めたところで
そんなに、傷つけてるならごめんな…と
相手の女の存在も守りつつ
私の為といいながら別れ話を切り出すに
違いない。


我ながら汚いなと思ったけど
秀一の困った顔の中にまだ私への気持ちが残ってる気がして、泣きたくなった。



「…朝は?大丈夫?起きれてる?」

なにも言えなくなった秀一に
話しかけながら部屋を見渡した。

半年ちょっとでこんなに変わるんだな…と思いつつ、いや、もうもっと前から変わったかもしれない。



私の形跡などどこにもない部屋。







「まぁこ、ごめんな」





ごめんな、ごめんなを繰り返しながら
泣きそうな顔になる秀一を
愛おしくてたまらなかった。




大好きだった。






8年間付き合ったからではない。


秀一のこうゆうずるい所も含めて
好きなほど。





私が呑み会で喋れなかった時にリードしてくれたり共通の音楽の話で盛り上がったり
上京して仕事がんばろうなってお互いに
勉強たり励ましあったり


結婚したら子供は何人ほしいなとか
2人で笑いあって朝までただ話したり
抱き合ったり


朝が弱い秀一が就職して一人暮らしに
なる為、毎日連絡すると約束したこと
同棲したほうが早いのになって
今はお互い別々に仕事がんばって30歳までには結婚してって
2人で決めたこと。



いろんなところに遊びにいった。

私が仕事で悩んでた時は励ましてくれた。
一緒にくだらない事で笑いあったり
将来の話しをしたり。





様子がおかしくなっても
別れる気もないこと、結婚を考えてたのも本当のこと、他に女ができても長らく付き合った彼女と別れ話をさっさと切り出せない所も

わかった上で別れたくなかったのは


ぜんぶ秀一だったからだった。













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