好きな人の好きな人。【完】
それから必死に走って先輩を追いかける。
なぜだかわからないけど衝動が勝手に足を進めるせいか
疲れはそう感じなかった。
「っせ、先、輩!」
見えてきた後ろ姿に必死に呼びかける。
「あ、のっ。せんぱ、い。」
「海音っ、どした?」
少しだけ困ったような、そんな表情に自分が情けなくなる。
こんなに突っ走って、我に返った気分だった。
それでも、もう後には引けない。
「あの、さっきの、誤解なんです。
あいつが勝手に言ってしまって、
ほんとに、ほんとに違うんです!」
なんでこんなに必死なのかと、
先輩が引いちゃうかもしれない。
それでも、誤解されるのだけは、私にとって言い表せない恐怖だった。