好きな人の好きな人。【完】
優しさ。
それから暫く先輩の隣を歩き続けていると。
「ここらへん、マジ暗いよな。
夜危なくね?」
そういって歩くペースを合わせてくれている先輩。
さりげない気遣いに胸が躍る。
「でもこんな見た目ですし。
誰も見向きやしませんよ」
ははっと軽く笑ってみせると、
「ばかいってんな。
もしかしたら俺が襲っちゃうかもよ?」
ギュッ、と手を握られて近くの壁に追いやられる。
背中に少しだけ痛みを感じて、
それでも先輩がこんなにも近くにいることだけは信じきれなかった。
私の足と足の間に先輩の足が挟み込まれて、
「ちゃんと自覚しとけよ。」
そういって私の手を引いて再び歩き始める。
先輩は先輩の言葉が私にどれくらい影響を与えるのか分かってない。
手を伝って私の鼓動が伝わらないことを願いながら、
家へと続く道のりを歩いた。