寒くて暖かい晴天
幼馴染み
*****



いつもはバタバタしているけれど、久しぶりに実家に帰ってきた。

札幌から高速に乗って、北に向かうこと30分。畑が多い以外に、そんなに取り柄もない小さな町が生まれ故郷。

ゴールデンウィークも終わりになる頃、実家の近くにある、高台の桜が咲いた。

多くのSNSサイトでは“桜が咲きました”という写真付きのコメントが上がっていたけど、ここはやっと咲いたって感じ。

山の方にはまだ残っていたりするんだけど、実は最近雪が降ったりもしたけれと、暦は間違いなく春だ。

北海道の春は遅くて短い。梅と桜が咲いたな~と思ったら、いきなり暑くなったりする。北国あるあるだよね。

「史華ちゃん……そんなとこで何してるの」

足元を見ると、隣の家の晴輝くんがちょっとだけ目を丸くして立ち止まっていた。

「あー! 晴輝くん。久しぶりー」

晴輝くんは、今年大学二年生だったかな。

すっかり大人っぽくなっちゃって、昔は黒髪のサラサラヘアだったのに、今はちょっと茶髪で、跳ねたようなアレンジしてる。

「久しぶり。史華ちゃんも帰ってきてたんだね。ゴールデンウィーク中だけ?」

「うん。ゴールデンウィーク終わったら帰るよ。仕事あるもん」

「しっかり働くお姉さんだ」

晴輝くんはそう言って、ぶらぶらしていた足を眺める。

「でも、相変わらずだねぇ」

ええ。木登り史華はまだ健在ですとも。

ニカッと笑いながら、晴輝くんを手招きする。

「晴輝くんも上がっておいで。上からの景色もなかなかだよ」

「……桜は下から見るのがいいんじゃないか。見付かったら怒られるよ?」

おお。君も大人になったもんだね。

じゃあ、仕方がないから、私も大人になってあげよう。

そんなに高い木じゃないから、ヒラリと着地すると、面白そうな顔をしている晴輝くんを振り返った。
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