寒くて暖かい晴天
「本当に見ないうちに大きくなって。私がここにいた頃は、まだ学生服着た少年だったのに」

見上げると彼はクスクス笑う。

……背も伸びたな。男の子はニョキニョキ伸びるから。

「史華ちゃんも髪が伸びた。前はショートだったのに、肩についてる」

「そりゃね。いつまでも子供のままではいられないでしょう」

そう言ったら、晴輝くんは私と桜の木をゆっくり交互に見て微笑んだ。

「……まぁ。そうだね」

何が言いたいのかなー?
そりゃまぁ、何となく想像つくけど。

どーせガキ臭いことしてるよー。

「……で? こんな時間にこんなところで晴輝くんは何してんの?」

「ううん。暇だからぶらぶらしに。相変わらずのどかだよねぇ」

……晴輝くんも相変わらずみたいだ。

この町には子供が少ないし、年齢は5つも離れているけど、お隣り同士の気安さからか、悠希くんは私の後をニコニコ追いかけてくるような子供だった。

転んでも、怪我しても、怒鳴られてもニコニコついてくるから、子供ながらに不気味に思ったこともあったっけ。

「暇なら花見しよう。お花見」

根本に置いていた鞄から、ブルーシートを取り出すと、バサッと勢いよく広げる。

「ほら晴輝くん。角に石置いて、めくれちゃうから。ほら、早く早く」

「史華ちゃんは、相変わらずせっかちだね」

「晴輝くんがのんびり過ぎるの! 一日24時間しかないんだし、ボケッとしてたら、あっという間に花は散っちゃうよ!」

「……桜も、史華ちゃん程せっかちじゃないから大丈夫だよ」

「花の命は短いの!」

「ああ。フラれたの?」

「うるさい!」
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