寒くて暖かい晴天
ギャアギャア騒ぎながら……と言っても、私が一方的に怒鳴りちらしているだけなんだけど……お花見の用意をして、ふたりで並んで座る。

座ってみても、町の様子がよく見えた。

広い広い町の風景。緑たくさんとは全然言えないけど、それでも空気には春らしさが混じる。

その風景に満足して、缶ビールを取り出すと、それを持って晴輝くんを見た。

「晴輝くんは未成年じゃないっしょ?」

「うん。史華ちゃんは、ひとりでも花見するつもりだったの?」

「まさか。誰か来たら誘おうかなって思ってた。ビール飲める?」

「ビールは飲んだことない」

ああ、そっか。それならお茶かな。

「じゃ、こっち飲んで」

ぽいっとお茶のペットボトルを渡すと、それを見ながら彼はクスッと笑った。

「史華ちゃんは、いつも無計画だけど計画的だよね」

「何それ、意味わかんないって。とりあえず、ここらへんにいたら暇な人が来るくらいわかってたし」

「ふーん?」

主要道路から離れた高台に来るくらいなら、暇人に決まってるもんね。

それならどうせ知り合いだろうし、巻き込めばいいやと思ってた。

「じゃ、乾杯!」

「うん。乾杯」

ビールとお茶じゃ花見じゃないような気がするけど、何となく乾杯して、それから一口呑んで、最後にお互いの顔を見て笑った。

「晴輝くんも札幌の大学だったね。どこら辺に住んでんの?」

「北区。大学の近くの方が楽だし……史華ちゃんは?」

「うち? 一応、中央区。同じく会社の近くの方が楽だし。飲みに行くにもすすきの徒歩県内だし」

そう言いながらスルメの袋を開けて、晴輝くんに向けたけど、彼は無言で首を振った。

美味しいのに……思いながら、耳の部分をかじると……。
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