寒くて暖かい晴天
「……史華ちゃん。彼氏いたことないでしょ」

微笑みながら言われて、ちょっと叩いちゃおっかな?って、一瞬考えた。

でも、これでぶっ叩いたら、あまりにも大人げない。

「晴輝くんが知らないだけで、彼氏くらい居たことくらいあるし!」

「ふーん。そうなんだー?」

そうだよ。そういうことにしておいてよ。

私もそろそろ母さんに、見合いとか勧められそうだから。

たまに送られてくる【誰か好い人いるのか?】というメールには、【いるに決まっているでしょ!】と嘘をついているんだし。

「そういう晴輝くんはどうさ? 大学行ってモテてる?」

スルメをむしって食べながら、ビールをくぴくぴと飲み干す。

それを見ながら、晴輝くんはニコニコと無言だ。

「ああ。モテてるんだ? やっぱりねー。モトがいいから、ちょっとお洒落すればモテるって思ってたよー」

「モトがいい?」

「うん。おじさんもカッコいいじゃない。少し眉が太いけど鼻も高くて真っ直ぐだし、健康的に日焼けして笑ったら歯が真っ白でさ」

「毎日畑に出てるから……」

「いやぁ。ちょい悪オヤジチックでなかなかの美中年だと思うよー?」

あれでバイクとか乗っていたらそのものだよね。でも、おじさんが乗っているのは軽トラだけどさ。

そんなことを呑気に考えながら、新しい缶ビールを開けたら、晴輝くんが微笑みを困らせるのが見えた。

「史華ちゃん……」

「ん?」

「不倫はダメだよー?」

誰が誰と不倫するって言うんだ!

目を丸くして固まった私と、眉を困らせながらも、微笑んでいる晴輝くん。

君も言うようになったじゃないか!
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