レンタル彼氏
「七瀬!この数字おかしくないか?」
主任に間違いを指摘されたのは
あれ?おかしいなぁ?と
思った日から3日後のこと。
華子と話した日の午後
仕事が手に付かなかったのは事実。
「あっ。。。そーですね
6と9を間違ってます!
すみません」
「確認したのがオレでよかったよ
小学生でもやらないミスだろ!
気をつけろ」
「ごめんなさい
すぐに直します」
「まったく!!!」
主任の怒鳴り声が響く
こんなの日常範囲のことだ。
だけど 今日は いつものように
冗談っぽく笑って受け取ることが
できない。
いつの間にか涙が頬を伝っていた。
「それぐらいのことで泣く?
泣くようなことか?」
「すみません
ちゃんと直します」
「それを直す前に
お前の顔を直してこい!」
「はい」
トイレに行って冷たいお水で
頬をポンポンと叩いて
気合いをいれる。
「何か悩み事か?」
えっ?と鏡越しにみると
後ろに主任が立っていた。
「えっ?主任!!!
ここ女子トイレですよ?」
「だから?」
「だから?って
ヤバイでしょ 誰か来たら
あれこれ言われちゃいますよ」
「そーだな
つい お前を追ってしてしまったから」
あたしを?追った?
期待させるような言葉。
「どういうことですか?」
「あ・・・神崎に言われたから
主任がガミガミ言うから!って」
あぁ それでか
それで追って来ただけか。
「なんでもないですよ」
「何もなくないだろ?
オレでよかったら話を聞いてやるぞ?」
一番この悩みを言えない相手。
「何もないですよ
泣いたのはいつもいつも
ドンくさいあたしが
情けないと思っただけなので」
「そっか?それなら先帰るぞ」
と足早に主任は
女子トイレから出て行った。