レンタル彼氏





「あっ!皆実産婦人科」


何かを思い出したように
突然主任が言った。


「なに?」


「姉貴の勤めてる病院」


「えっ???
それ早く言おうよ」


主任はテンパっていて
実の姉が産婦人科に勤めてることを
すっかり脳裏から消されていたようだ。


「マジっすか?
それって何かの縁で
そこかもしれないですよ
掛けてください」


「掛けにくいなぁ
姉貴 口うるさいからな」


「そんなこと言ってる場合ですか?!
早くしてください」


みんなに急かされ主任は
自分の携帯から病院へと
電話をかけたのだった。


「そちらの山本と言う看護婦の
家族ですが緊急で話したいことが
あるので呼んで頂けますか?」


「家族?」


「そーです 弟です」


「少々お待ちくださいませ」


しばらくして姉が電話を取った。


「征吾?なに?
病院に電話してくるなんて
母さんに何かあった?
それとも父さん?」


「あのさ 先週の木曜あたりに
七瀬円香って患者来てない?」


「知らないわよ」


「知らないとかソッコーで言わずに
調べろよ」


「なに?あんたの彼女?
胎ましちゃった?」


「下品な言葉使うな!」


「待ってよぉ〜
カルテ探してみる
だけど内緒だからね
こんなことしたらダメなんだから」


姉はたまたま仲のいいのが
受付の人だから
電子カルテのデーターを
出してもらって確認していた。


「あるけど?」


「ある?ある?
来てるってこと?」


「うんそうみたい」


「子供いるのか?」


「それは言えない」


「なんでだよ!」


「この子とあんたの関係を
聞かないとね」


「上司と部下」


「だだの?」


「そーだけど?」


「だだの上司と部下なら
教えられないわね」


個人情報のため
来たことだけしか
教えられないと姉は言い張る。


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