レンタル彼氏
「じゃあ 藤堂さんって
呼ばせていただきます」
「はぁ? オレら付き合って
どのくらい設定なん?」
「1年弱かな
年末に会った時に半年って
嘘ついたから」
「付き合って1年で
苗字はおかしくない?
征吾でいいわ」
「そんなぁ 呼べません!」
「じゃあどーすんの?
オレは呼ぶよ円香って」
突然呼び捨てにされると
テレてしまう。
「あれ?円香ちゃん?
トマトみたいになってるけど?」
顔を覗かれたら余計に赤くなっちゃう。
「もぉー!からかわないでください」
「お前 絶対バレるやつだな
名前呼んだだけでそんなんだったら
すぐにバレるわ」
「大丈夫です
当日は女優魂で遣り抜きますから」
「ほーぉ なるほど
じゃあ オレも男優になるかな」
あたしのアパートの下へ着いた。
あたしは勇気を持って
「征吾っ!今日はありがとう」
めっちゃタメ口のしかも
名前 呼び捨てで言ってみた。
「えっ・・・」と
一瞬黙った主任だったけど
「おい!そこは主任で
いいんじゃない?」と言われてしまう。
「あ・・・すみません」
初めて主任の名前を呼んで
いまだにドキドキ言ってるあたしの心。
「おやすみなさい」
「おやすみ
明日寝坊すんなよ」
「はい!任せてください」
あたしが主任を見送るために
ずっとその場に立っていたら
主任は窓をあけて
「どうした?忘れ物か?」と聞いた。
「主任の車を見送ってるんですよ」
「バカ!見送りはいいわ
早く上がれ!」
「主任こそ早く帰ってください」
「お前が上がるまで
ここで待つわ
早くしろ!眠気が襲うだろ」
「わかりました
家に帰るまでは寝ないでくださいね
危ないですから」
「お前に言われなくても
わかってる!早く上がれ」
あたしはもう一度頭を下げて
部屋へと上がって行ったのだった。