レンタル彼氏
一難さればまた一難
華子と待ち合わせてご飯に行こうと
さっさと着替え更衣室から出て
エントラスに向かっていたときのこと。
「あ・・・」
心の中で言ったはずの言葉は
かすかに音となって出てしまった
その理由はそう
目の前に水口さんの姿が見えたから。
向きを変えて逃げるのも不自然だし
このまま前に進むのも勇気がいる。
歩く速度が遅くなる。
「あっ 七瀬さーん
ちょっといいかしら?」
ついに声をかけられてしまった。
「はい」
「あれ?その袋は?」
その袋とは主任にもらった香水が
入っている袋のこと。
「あっ。。。これは
しゅ・主任が旅行に行かれたみたいで
そのお土産を頂きました」
「ふーん そう」
そっか 確か
水口さんも香水だったはず
同じ袋だから変に思ったのかな?
「朝の続きだけど あなたは
どこへ行ったの?ひとり旅?」
朝言ったよね?
学生時代の友人と!って。
「あの・・・いえ
友達と」
「ふーんどこへ?
ねっ!どこへ行ったの?」
もうだめだ
言うしかない。
主任がみんなに言ってたあれにしよう
あたしのおばあちゃんの
重症説。
この人に通用するかどうかは
わからないけど。
「ごめんなさい」
「えっ?ごめんなさい?
あたしに謝る事したの?」
「ま・・・そーですね」
「なんなのぉ?」
「主任をお借りしました」
「はぁ?藤堂主任を???
意味わかんないんだけど」
あたしは一生懸命説明をした
おばあちゃんが重症で・・・
あたし1人片付いてなくて・・・
心配で・・・って
そしてお金で主任を雇ったと。