ヘタレな野獣
山田部長はそう言いながら私の前に二枚の紙を差し出してきた。

えっ?
だって、これは食堂で破り捨てた筈じゃ・・・

「お前さぁ、一枚な訳ねぇだろうが!」

眉間に皺を寄せ、掴みかかってくる勢いで大声を張上げる下柳・・・


「ちょっと失礼します・・・」

憎たらしい下柳を制してヨレヨレ君が私の傍らに寄ってきた。

「ほう、これはよく撮れていますねぇ。ね?田崎補佐」

なんてまるで人事のように言う。

「へぇ・・・認めるんだ、あぁまみや課長?・・・」

挑戦的な口調で下柳が口を開く。

「あははっ、認めるも何も、映画館でお会いしましたよね、下柳補佐。あなたでしょ?これ撮ったの」

知ってますよ、シャッターチャンス狙ってましたよね・・・ヨレヨレ君は、まるで自分達を付け回していたが如く下柳の行動を口にした。

「やっ、やだなぁ・・・
その言われ方だと、俺がまるで課長達をストーカーしてたみたいじゃないっすか」


少し怯んで、口調が変わる下柳。

えっ?そうなの?
ずっと付け狙ってたの?

「まさか、劇場で遭ったのは偶然でしょうが、これ、携帯で撮ったものではありませんよね?
もしかして鞄の中にいつも入れていたのですか?デジカメ・・・」
「だっ、誰が撮ったかは、今そんな事を言ってるんじゃねぇんだよ!」
「下柳、お前、仮にも上司に向かって・・・」

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