ヘタレな野獣
信じられない、じゃ、下柳の動きを知りたくて・・・私を騙していたの・・・?


あの言葉も、私を思い続けていたという、あの言葉も・・・うそ、だったの?


「・・・お先に失礼致します」
「えっ、冬子さん、ちょっ・・・」

堪えられないよ・・・
一度考え出したら悪い方へ悪い方へと止まる事を知らない。


私は何かを言いかけたヨレヨレ君を背に、ユラユラと会議室を後にした。


二課に戻ると、武田君が待っていてくれた。

「お疲れぇっす、俺、これで帰りますけど・・・」
「うん、お疲れ。あっ、武田!?」

ん?といった風に立ち止まり、私を見ている武田君、心配して待ってくれていたんだ、お礼言わなきゃ・・・

「ありがとね、また明日・・・」

すると、ニカッと笑って、お疲れぇっす、また明日と右手を上げて帰っていった。


何だか凄く疲れた。

「・・・帰ろう」

がらんとした二課を見渡しながら独り言を呟いた。


もう18時を回っているというのに、陽はまだ赤く、窓から射し込んでいた。



事務所を出た所で携帯が鳴る。詰めたばかりの携帯を鞄から取り出し、相手を見ると、岸田からだった。



「もしも・・・ングッ・・・」

油断していた訳ではない、いきなりだった。



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