ヘタレな野獣
携帯に出たところを後ろから口を押さえられ、抱えられるように隣のミーティングルームに押し込められた。


誰?


やだ、助けて、助けて・・・


壁に叩き付けられ、頭がクラクラする。


「お前さぁ、マジむかつく!
いい加減俺の前から消えてくんねぇかなぁ」


下柳・・

「なんでお前の周りの男共は、こうもお前に甘いんだろうなぁ」

低く響く声で私を威嚇してくる。


「なぁ、もうあいつとヤッたのかよ」

ジリジリ私に近寄ってくる。

「こっ、来ないで!!!」
「お前さぁ、自分の置かれてる今の立場、理解できてねぇんじゃねぇのか?」
「来ないでよ!
おっ、大声出すわよ!!!」

怖い、凄く怖い、こんな下柳、見た事ない・・・


下柳の右手がゆっくりと伸びてきた。

その先にある指が私の髪を捉える。

指先でくるくるしながら私の顔を見下ろしている。


グイッ


「いったっ!!!」
「ふふふっ、当たり前ぇじゃん、引っ張ってんだからさぁ・・」


そう言いながらグイグイ髪を引っ張り続ける。


「お願い、止めて・・・
止めて下さい、お願い、します」


ボロボロ涙がこぼれ出す。


「こんな女のどこが良かったんだか、小泉の奴・・・」

えっ?

今、正君の名前


「お前のせいで!
お前のせいでアイツは!!!」



< 104 / 148 >

この作品をシェア

pagetop