ヘタレな野獣
近くにある個人病院の外来で、診察時間はとうに過ぎてはいたが、またまた残っていた女医先生の好意で、診察して貰っていた。




『この事は社長の耳にも入れなくては・・・』
『しかし、田崎さんはそのような事を望んでいないと・・・』
『しかしだねぇ、』

待合室から聞こえてくるそんな会話から、先生が口を開いた。


「第三者のあたしが口を挟む事では無いけどね?
相手の事は分からないけど、きっと何らかの理由が有るはずよ。
判断はそれからでも遅くないんじゃないかな。

早まった判断は、時に人を感情だけの、憎しみ以外何も生み出さない。どうしようもない事態を招くだけだから・・・

あなたの心に傷が残らない事を祈っているわ」


先生はそう言って、柔らかい笑顔を私に向けた。


「会社の方、終わりましたよ。
これが診断書です、ここにも書いてありますが、全治7~10日と言ったところでしょう。
少し打撲が所々にあります、顔の腫れは今より明日明後日の方が酷いと思われます。
頭髪もかなりの量がぬけ落ちています、暫くはその頭皮の痛みも残るでしょう。暫くはその痛みとの戦いね?
まぁ、歩行には何ら支障は無いかと・・・
じゃ、お大事になさって下さい」

「ありがとうございました」


事務方が既に帰ってしまっていたので、精算は明日でいいと言われ、痛み止めの鎮痛剤と抗生物質、そして湿布を貰って、再度会社に戻った。


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