ヘタレな野獣
ふ〜ん、アマミヤ君はアメミヤ君を崇拝、してるんだ。



「だから、その・・・」

彼は途中まで言いかけた言葉を切って、深呼吸した。

「だからっ、僕が直接雨宮君に話しましょうか?」


は?「・・・何を?」


「だからっ、こちらの会社に移る気はないかと、僕が雨宮に直談判、しましょうか?」

・・・

この人、一体何言ってるの?


「へっ?」


「だって、・・・この不況下で、多分、いえっ、きっと戦力にならない僕なんか雇うより、絶対彼を雇った方が良いに決まってますよ!」


エヘンと言わんばかりに胸を張って言い切る彼。

何だこいつ、頭のネジが何本かすっ飛んでたり、するの?


「あの、ね?雨宮さん?」

「はいっ、直談判、しますか?」

眼鏡の奥の瞳を輝かせるの、止めて欲しい・・・

「そんな事したら、貴方本当に路頭に迷いますよ?」


ハッとした顔で黙り込むのも、止めて・・・



とにかく私に考える時間を下さい・・・冬子は神に祈らずにはいられない。



無言で席を立ち、会議室のドアを開けて、彼に部屋を出るよう催促する。



「・・・・・」
「・・・・・」


2人、無言で廊下を歩く。

ホールで従業員専用のエレベーターを待つ。



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