ヘタレな野獣
あれから一週間、私は鏡の前で自分とにらめっこをしていた。

「明日から、行くかなぁあ・・・」


顔の腫れは既に引いていた。


ただ内出血した箇所に痣のようなくすんだ色素の沈着があった。


この程度ならファンデーションでどうにか隠せる。


この一週間、岸田とは毎日連絡をとっていた。


毎日会社であった事を掻い摘んで知らせてくれた。

山田、田中両部長からも連絡はあった。



しかし、ヨレヨレ君からは一度も連絡は無かった。


ピンポーン、・・・


あっ、岸田だ。

夕べ、お昼頃に行ってもいいかとメールしてきた岸田。


私も聞きたい事があったから、ちょうど良かった。


インターホンのモニターを確認して鍵を開けた。

暫くして、岸田が部屋に上がって来た。


「おっ、だいぶ戻ったじゃん、他は?」


ケーキボックス片手に現れた岸田、久し振りに見る笑顔だった。



「一週間、ご愁傷様でござった・・・」

ケーキボックスを私に差し出しながらおどける岸田・・・

「いやはや、かたじけない」

それを受け取りながら私も付き合う。


そして顔を見合わせて、大笑いする。


「やっぱ、岸田と居ると楽しいや、飽きなくて良いわぁ・・・」
「そうだろ、そうだろ!
あたしも冬子が居なくて寂しかったぁあ」



「で、いつから出てくんの?」

暫くして、岸田が聞いてきた。


「実は今日来たのは部長殿に頼まれたからなんだよねぇ、って、まぁそれは口実なんだけどさ?」

“冬子が会いたくないかも知れないから今まで来るの遠慮してた”なんて乙女な事を言う。


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