ヘタレな野獣
「下柳、会社に辞表出したよ・・・」

えっ・・?

「あの日一晩拘留されたらしいんだけど、翌々日には出勤してきてさぁ、もお驚いたの何の・・・えっ?・・・まさかとは思うけど、雨宮課長から連絡入ってるよねぇ?」

少し驚く私を見て、岸田は眉をひそめた。

「・・・入ってないよ、ってか、あれからメールの一つも来やしないし・・・」
「っ!!!だって!
だって、雨宮課長、奴と部長と話してたって・・・
冬子に再確認するけど、告訴するかも知れないからって、奴に伝えてたらしいよ。
この間そんな事、言ってたもん、だからあたしはてっきり・・・」
「・・・そうなんだ・・・
ねぇ、岸田ぁ、あの時ね?下柳に言われたんだ、あたし・・・あたしのせいで正君、死んだんだって・・・」
「ばっ、そんなの、ある訳無いじゃない!!!」
「ちゃんとは分かんないけど、あの時の下柳、泣いてたような気がするんだ・・・」
「・・・・・」
「私、下柳に会いたいんだ・・・
会って話を聞きたい、何故あんな事をしたのか、正君とはどんな間柄だったのか・・・
そして、正君は何故自殺しなきゃいけなかったのか・・・」


岸田はそれから何も言わず、持参してきたケーキを口一杯に頬張った。

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