ヘタレな野獣
岸田が帰った後、私は先月行く事が出来なかった正君の墓参りに行く事にした。


そこで私は見てしまったんだ。

下柳とヨレヨレ君が、正君の墓前で何かを話しているのを・・・


近寄る事が出来なかった。

ハッキリとは判らないが、下柳は泣いていたようで、そんな下柳をヨレヨレ君は厳しい表情で睨み付けていた。



数日後、ヨレヨレ君経由で改めて出社の許可が下りたと連絡があった。


電話連絡で良いものを、彼はわざわざ私のマンションにやって来た。

何日か振りの彼の優しい笑顔を目の当たりにし、暫く遠ざかっていたときめきが、また私を襲う。

「暫く振りですね、その後のお加減はいかがですか?」

社交辞令的なその言葉に、何故だか淋しくてたまらなくなった。


「ホントはどうでも良い癖に・・・
あたしの事なんて、ホントはどうでもいいくせに!」
「そんな事、ある訳ないじゃないですか!
冬子さん、何でそんな・・・一体どうしちゃったんですか?」


「正君の・・・小泉さんのお墓の前で・・・
下柳と何話してたの、・・・?」

私は数日前に目撃した光景を、思わず口にしてしまった。



「・・・・・」


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