ヘタレな野獣
隣に座るヨレヨレ君は身を乗り出し、弁護士先生に詰め寄った。

「事の始まりは3年前、だと下柳本人から聞きました」


「っ、それはどういう意味だね、雨宮課長は何か知っているのかね!?」

山田部長の顔色が変わった。


私を一度直視した後、山田部長に促され、ヨレヨレ君は言葉を続けた。


「覚えてらっしゃいますか?
3年前、1人の男性社員がこの世を去った事を・・・」

えっ?


私は鼓動が早くなるのを感じながら、ヨレヨレ君を見た。



「覚えているとも、小泉君、の事は・・・」

うそ・・・

「部長は、彼が何故自殺を図ったか、何故自ら命を絶ったのか、御存知ですか?」


「・・・・・」



今回の事と正君が、何らかの関わりを持っているの?
そして、その事を、部長は知っているの?


「まぁいいでしょう、
僕が下柳から聞き出せた事・・・
それは、僕をガッカリさせるモノでした。
そんな事の為に、命を絶つ者、自分の人生を棒に振る者、ハッキリ言って、こんな馬鹿馬鹿しい事だとは思いませんでしたよ」


核心をはっきりさせないまま、ヨレヨレ君は今にも泣き出しそうな表情をしていた。



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