ヘタレな野獣
「でも、紹介されなくて・・・よかった。
もし、紹介されていたら、・・・
きっとあいつと僕とは親友を続けてはいけなかったと思う・・・」


あっ、あいつって・・・?
さっきから言ってるあいつって、一体、誰?


段々近くなるヨレヨレ君の視線から懸命に逃れながら、そう思った。


「写真でしか知らない冬子さんは、実際会ってみるととても魅力的な女性で・・・
僕はあっという間に魅了されてしまった・・・

僕はあなた以外には考えられません。冬子さんの何もかもが、僕の全てなんですよ・・・」


そう言ってそっと唇を重ねて来たヨレヨレ君。

止めてと口を開こうとした途端、彼の舌が私のそれに侵入してきて、私を刺激する。


「・・・今まで遠くから見てるだけだった。
あなたは親友が愛した女性・・・
見守る、アイツとの約束・・・
だから、好きになってはいけないんだと・・・
何度も何度も、自分に言い聞かせた・・・
でも、もう見てるだけなんて、イヤなんだ・・・」

キスをしながら、ポツリポツリと私に訴えてくる。

唇を重ねたまま話すもんだから、所々が聞き取れない。

ううん、そうじゃない、私、彼に欲情してるんだ。

気持ちが高ぶって、会話なんてどうでもいい・・

そう思ったんだ。


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