ヘタレな野獣
甘く激しいキス、ソファの背もたれに追いやられた私は、いつの間にか彼の首に腕を回し、彼のキスに応えていたんだ。


そんな私にヨレヨレ君は驚いたのか、唇を離した。



今の私にはヨレヨレ君が、私が全てだと口にしてくれた、それだけで十分だった。



他に気の利いた言葉は、要らない・・・



その夜、私達は、初めて肌を重ねた。



何度も何度も、互いを求めて求められて・・・



彼の傍らで目覚めるのは、何度目だろう・・・


いつも、私が目覚た時には、ヨレヨレ君は既に起きていて・・・
でも今回は、私の方が早かったみたい。



私を軽く抱き締め、こちらに顔を向けて、スヤスヤ寝息をたてて気持ちよさそうに眠っている・・・


もう、恋はしないかも知れない・・・

あの決別の日にボンヤリそんな事を思っていた私が今、まだ知り会って日の浅い男と、体を重ねたけだるさが残るベッドに、こうして抱き合って眠っているなんて・・・


「いいのかな・・・あたし、先に進んでも、いいのかな・・・」


無意識に口からこぼれた台詞に、私を抱き締めるヨレヨレ君の腕に力が入った。



聞かれた?


恐る恐る彼の顔を覗いてみたけど、相変わらず綺麗な顔で寝息をたてていた。



直君、私、好きな人が出来た。
だから、・・・



心の中でそう呟き、彼の胸に顔を埋めて、再び眠りに落ちた。

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