ヘタレな野獣
「そうか、でもとこちゃんが選んだ人だ、上手くいくといいね。
正直もあっちで応援していると思う、とこちゃん、幸せになるんだよ?」

そう言ったお父さんの表情は・・・
自惚れかも知れないけど、とても淋しそうに見えた。


カタンッ・

背後で何か音がした。


「やぁ、タケ坊」

お父さんが視線を私から後ろに移した。


えっ?、今タケ坊って・・・

私はゆっくりその人物が立って居るであろう後ろを振り向いた。



「やぁ、冬子さん」


う、そ・・・


なんで、ヨレヨレ君がここに?


私の思考はメルトダウン寸前だった。


人はどうしようもなく追い詰められると、自らの思考を完全にストップさせる事があるらしい。

今の私が正にそれだ…




話し声が遠くに聞こえ、ハッと我に返る。


何故か座椅子に座らされ、座卓に平伏していた。

「っ!とこちゃん、大丈夫かい?」


お父さんが私に気付き、近寄ってきた。



「・・・私・・・?」
「驚いたよ、いきなり倒れるもんだから・・・」

えっ?私、意識を飛ばしていたの?

お父さんの後ろから、ヨレヨレ君が私を覗き込んで来た。


やっぱり、見間違いじゃ無かったんだ。


一体これは・・・



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