ヘタレな野獣
何となく、予感はあった。
けれど、まさか、正君の親友だったなんて・・・
最初からそうだと解っていたら、私・・・
解っていたら?
解っていたら、何だというの?
違う、仮にそうだと解っていても、私はきっとヨレヨレ君に恋していた。
彼にしても、正君との関係を私にひた隠しにしていたのにはそれなりの考えがあっての事だと思う。
ただ、素性を隠され、半ばペテンにでもかけられたような、この状況が嫌だった。
「・・・ごめん、少し時間が欲しい・・・」
やっと前に踏み出せた一歩に、重みを掛けられないで居る。
でも、出したその一歩は退きたくはない。
だから、後ろに残った足を前に踏み出せるよう、時間が欲しかった。
「僕は謝りませんよ、別に隠していた訳じゃありませんし、冬子さんには、一人の男としてちゃんと見て欲しかった。それだけですから・・・
あなたがどれだけ僕と距離を置いても、アナタを見守ります。
今までそうしてきたのだから・・・」
私はヨレヨレ君のそんな言葉を背中に聞きながら、お父さんにも挨拶もせず、小泉の家を飛び出した。
「とこちゃん!!」
玄関を飛び出した所で、お父さんに呼び止められた。
「二階に上がらないのかい?」
「・・・・・」
「・・・そうか、じゃちょっと歩こうか」