ヘタレな野獣
「行き詰まったら協力要請するから、その時は宜しくぅ、じゃ部長戻ったら携帯鳴らして?」
「えっ?戻んないの?」
「腹が減っては戦は出来ないからねぇ、私達もランチしてくるから、じゃあね」

岸田に伝言頼んで、私達はその場を後にした。





「まずはそのスーツ・・・」

食事を終え、食後のコーヒーを飲みながら、私は気になっていた事を口にした。

「えっ?スーツ、ですか?」
「う〜ん、やっぱり見た目は大事だからなぁ・・・」
「はぁ・・・そんなものですか・・・」

気の無い返事が返ってくる。

「何着位、持ってるの?」
「えっ?スーツですか?
今着れるのは多分2、3着位、ですか・・・」
「うそっ!それだけしか持って無いの?」
「はぁ、営業にいた頃はそれなりに持っていたんですか・・・ここ数年は、」

はっはぁ〜ん、事務方に異動して、外に出る機会が減ったから、身なりに構わなくなった、そういう事、か。

「じゃあ、昔買ったスーツはあるのね?」
「えぇ、まぁ・・・」

ヴヴヴ・・・

携帯が鳴って、部長が戻ったと岸田から連絡してが入った。


「さぁて、と、行きますか、雨宮課長?」
「かっ、からかわないで下さいよ!」

あはははっ、見た目はパッとしないけど、彼と居ると、落ち着く自分が居る事に、少し戸惑いながら、会計を済ませ会社に戻る。


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