ヘタレな野獣
「では明日、宜しくお願い致します、お気を付けて・・・」

必要書類に署名捺印をして、入社に際する一連の儀式を終えたヨレヨレ君は帰って行った。
課の子達を混乱させないよう、今日のところは帰って貰った。

部長には、ヨレヨレ君の出社を週明け迄待って貰えるよう話をし、と言ってもGW明けだから今週は今日を入れても後1日しか無い。

課の連中へのお披露目迄、土日を入れてたったの3日。
何処まで仕上がるか分からないけど、やるだけはやってみよう。

そんな事を考えながら、課に戻る。




「お疲れ様です。今朝の人、何だったんですか?」

田之上さんが私の姿を確認するなり、デスクに寄って来た。

「・・あっ、あぁ、あれ?なんか、間違い?みたいな?」
「へっ?」
「だぁからぁ、気にしなくていいから、それより、5日締めの請求書、で来てるの?」
「でもっ!あの人アメミヤって名乗ってましたよ?新しい課長・・「だからぁ!それが間違いだったの!はいっ、この話はお終い、ほら、仕事に戻って!」

私は犬でも追い払うかのように手でシッシッと、田之上さんをデスクけら引き離した。

「間違いって・・・何が間違いなのよぉ・・・」
ブツブツ文句を言いながら、田之上さんは自席に戻って行った。

危ない危ない。
私は額の汗を拭う仕草をしながら田之上さんを見ていた。

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