ヘタレな野獣
午後の2時を回った頃、会計を済ませ外に出て、駅迄2人肩を並べて歩く。

その間、彼は機関銃のように間を空けず喋り続けた。

特に私から何かを尋ねた訳でもない。


前職の事、自分の事、友人関係に女性関係まで、彼は包み隠さずおおっ広げた。

「これでも学生の頃は結構モテたんですよ?今の僕じゃ想像出来ないと思うけど・・・」

そんな昔話でもないのに、ヨレヨレ君は少し遠い目をした。


「ぷ・・・ぶはははっ!」
「?・・・何ですか?急に笑い出したりして・・・」

ヨレヨレ君は、急に笑い出した私を怪訝な表情で見る。

「だっ、だって・・年寄りみたいなんだもん、その言い方」
「年寄りみたい・・ですか、はははっ、確かに・・・」
「ふぅ、でも、何となく分かるよ。社会人になっちゃうと学生時代って、何だか遠い昔の事のように思えるの・・・」

学生時代は、二十歳は過ぎても、まだ学生だからと、何かにつけて甘えてきた。

バイトはしても、それは自分の為、少しでも遊ぶお金が欲しかったから。
特に実家で親と一緒に生活していた私はそうだった。

朝、親に起こして貰い、家に帰ると食事の用意がしてあって・・・

《親》という傘に守られていた。

5つ上の兄貴が結婚して同居するのを機に家を出て、初めて親の有り難みが分かった。

どれだけ親に甘えて来たか、そしてどれだけ守られ愛されてきたか・・・


< 23 / 148 >

この作品をシェア

pagetop