ヘタレな野獣
「・・さ?田崎補佐?どうかしましたか?」

物思いにふけっていた私を現実に引き戻すヨレヨレ君。


「僕、何だか田崎補佐とだと、何でもやれちゃいそうな気がしてきちゃいました!」

電車を待つプラットホームで、彼は何を思ったのか、いきなり私の手を取り、そんな事を言い出した。

「僕を男にして下さい!!!」

っ!!!!!

はぁああああ?ちょっと、それは、一体・・・

あまりの声の大きさに、周りに居た人が私達を見る。

その中の何人かの男性は、ニヤニヤしながらこっち見てるし・・・

「っ、馬鹿っ!何言ってるの?信じられない!」

私は恥ずかしくて、思わず彼の手を振りほどいた。

ホームに滑り込んで来た電車に飛び乗る。

やだぁ、もう、ホント調子が狂うんだから。

「田崎補佐ぁ、先に行かないで下さいってばぁ」

電車のドアにスーツの裾を挟まれたヨレヨレ君が、それを一生懸命引き抜こうとしながら、私を恨めしそうに睨んでいた。

私はそんな彼を無視して、空いた席に腰掛けた。

「もお!
田崎ほさぁあ!」

週明けの昼下がり、空いた車内にヨレヨレ君の大きな声が響き渡った。



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