ヘタレな野獣
「なかなかの出来栄えだったよ、言うだけの事はあるじゃないか」

プレゼン終了後、担当部長から声を掛けられ正直驚いた。

今迄どの企業もプレゼン終了後にそんな言葉をかけてきた担当者はいなかったから・・・

でも、同じ言葉を参加企業にも言っているかも知れない、タヌキなのか?

「今日は大切なお時間を頂戴致しまして、ありがとうございました。今後とも長くお付き合いさせて頂きたいです。
では、私達はこれで失礼致します」
「ちょっと、田崎君といったね」

ヨレヨレ君が気になる、足早にこの部屋を出ようとした時、担当部長にまたしても阻止され、私は振り向いた。

「いや、何ね?今晩、空いているかね」
えっ?
「は?」
私は担当の言っている意味が理解出来ずにいた。


クスクスッ


担当部長の部下であろう男子社員4名が、担当の背後から私を見て、笑っている。

「だから、空いているかと聞いているんだ!」

少しイラつく声で同じような台詞を口にする。

「はぁ・・・」

「田崎さん、山下は貴女を食事に誘っているんですよ、ね?部長?」

4人の内の1人が担当部長を援護する。

私が答えに困っていると、その1人が部屋を出て際のすれ違いざまにこんな事を言った。


「貴女が食事に付き合えば、このプロジェクトは御社のモノだ」

私は武田君と顔を見合わせた。

武田君は少し目を細め、小刻みに首を左右に振る。

多分そういう事だ・・・


【枕営業】



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