ヘタレな野獣
女を軽く見てるのか、私を軽く見ているのか、・・・

「あのっ!申し訳ありませんが、私はそういう・・「雨宮君と、言ったかな?新任のおたくの課長さん」

はっ?なんで、そこにヨレヨレ君の名前が出てくるの?

「彼も苦労するね、ヘッドハントされていざ転職したはいいが、部下が使えないとなれば、ねぇ、実力を発揮する前に・・・これ、だな」

山下部長は、自分の首に右手の親指を当てて、それを真横に引いた。


クビって、事?


そうだ、このひと月の間に結果を残さなければ・・・

でも、何で部外者の、まだ取り引きも始まっていない会社の人間に口を出されなければならないの?


「まぁ、無理にとは言わないよ」

フフンと鼻で笑って私の肩を二度三度と叩いて、ニヤリと笑い、会議室を出て行く。


「・・・部長!!!」

私は一瞬迷い、山下部長の後を追いかけ歩き出した。

「ちょっと、田崎補佐?」

武田君が私の腕を捕まえる。


「・・・何だね?
用が無ければこれで失礼・・「ぜっ、善処させて頂きます!」
「補佐!」

無意識に発した言葉に、武田君は目を見開き、怪訝な表情で見ていたが、私はそんな事はどうでもいい、部長から視線を外す事なく、発言を待った。

「ほぉ、善処、ねぇ・・・」


「補佐?一体自分が何を言ったか分かってるんっすか?」
「武田君は黙ってて。
明日明後日には連絡を入れます、ので」
「はははっ、待っているよ」

山下部長は高笑いしながら、その場を去った。


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